サルビアの育てかた
 しかし、安堵したのも束の間。
 数ヶ月後に突然、ロイが一人で孤児院を訪れてきたのだ。
 彼はなぜか涙を浮かべてシスターの顔を見るなり、抱きついてくる。

「どうしたの、ロイ」
「あのいえに いたくない」
「どうして?」
「ぼくがなんにもできないから。お母さんはぼくにおべんきょうをがんばってほしいのに、ぼくはまだ字が下手くそなんだ。けいさんもおそいし外国語もむずかしくておぼえられない。だからお母さんがいつもぼくに大きいこえでおこるの。お父さんはぼくにスポーツをおしえてくれるんだよ。でもぼくは、ボールを遠くにけることができないし、キャッチボールも下手なんだ。何回れんしゅうしても失敗するから、お父さんがどなるんだよ。ぼくがろくでなしでわるい子だからだよね……。お母さんとお父さんを困らせたくない。だからもう、あのおうちにかえりたくない」

 ロイは顔を真っ赤にしながら悲痛の声を上げる。
 そんな彼の様子を目の当たりにしたシスターも、その時ばかりは涙が止まらなかった。
 シスターは孤児院でロイを再度保護することに。
 翌日里親を呼び出して話を聞くと、更にシスターの逆鱗に触れる事態になってしまう。
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