サルビアの育てかた
 ──取材が終わりそうにないので、俺は両親と共に会場の駐車場でレイが戻ってくるのを待つことにした。今日出場していたダンサーや関係者などを乗せた車が次々と会場を後にし、その場には俺たちしかいなくなった。
 空はすっかり暗くなったが、丸い月が静かに夜を照らす。

「なあ、父さん母さん。俺、これからもレイと仲良くやっていけそうだよ」

 ちゃんと父と母に話すべきだと思った。まっすぐに二人を見つめ、俺は正直な気持ちを伝えようと語り始める。

「あいつが努力してる姿を間近で見ていたら、俺も頑張ろうって思えるようになったんだ。正直、出会った当初は構いたくもなかった。だけど今ではレイの存在自体が俺の活力になってるよ」

 そんな俺の言葉に、母の表情は柔らかいものになっていく。

「ヒルスがあの子のことを、そんな風に思ってくれるなんて……本当に嬉しいわ。たしかにあなたは、最初はレイを見て戸惑っていたものね」
「お前は弟妹なんていらんとずっと言っていたからな」

 俺はぎこちなく頷いた。
 正しく言うと、血の繋がらない妹を家族として迎えるのに少なからず抵抗があった。

「あいつがただの同居人だなんてもう思わないよ。レイは俺たちの大切な家族の一員だ」

 三人でこんな風にレイについて話すなんてこと、あまりしてこなかった。だが、俺の中で彼女に対する見方が変わった事実をどうしても両親に伝えたい。本当は「レイを実の妹のように思っている」と言えるのが一番なのだろうが──どうしてもそれだけは口にできない。嘘なんてつきたくなかった。
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