サルビアの育てかた
 しかし、寸前でレイの人差し指が欲に走ろうとする俺の上唇を止めたんだ。
 パッと目を開けると、彼女は優しい顔で俺に囁く。

「だめだよ、ヒルス」
「……ごめん」
「私、待てるから(・・・・・)大丈夫だよ。……焦らないで」
 
 彼女が言い放ったその一言に、俺は目を見開いた。どんな表情をしているのかと思えば、レイは変わらない笑顔で俺を見つめている。

(レイ、それはどういう意味だ?)

 彼女は本当に、俺たちの関係に薄々気づいているのか?
 はっきりと口に出して言えるわけじゃないが、レイの言動がそうだと物語っているとしか思えない。いくらなんでも、これは気のせいなんかじゃないはず。

(もし本当にそうだとしたら、待つ必要はあるのか。レイが事実を知っているなら……俺の気持ちを伝えてもいいんじゃないのか)

 俺の魔の心はとんでもなくしつこい。俺の欲と両親の想い、どちらを優先すべきなのか考えるまでもないのに。

 どうにか熱を下げようと必死に戦い続ける中、レイは俺の頬を静かに撫でてくれる。柔らかい彼女の手の感触に、もうとろけてしまいそうだ。
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