サルビアの育てかた
 小恥ずかしくなった俺は、目線を前に戻す。ちょうど青信号に変わったところで、ゆっくりとアクセルを踏み込んだ。

「私がダンスをはじめる前にヒルス言ってたよね。『俺は誰かにダンスを教えられる立場じゃない』って」
「ああ……そんなこと言ったな」
「でも今ではこんなに立派なインストラクターになっているんだもの。未来って何があるか分からないね」
「そうだな。だから面白いのかもな」

 インストラクターとしての今の俺がいるのは、ジャスティン先生とレイのおかげだ。

「私、熱心にダンスを教えてくれるヒルスも大好きなの。これからも続けてくれるよね?」
「ああ、もちろんだよ。身体が許す限り、一生続けていくつもりだ」

 俺がはっきりとそう答えると、レイの手の平のぬくもりが更にあたたかくなった気がした。
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