サルビアの育てかた
 体が震えたところで、レイは俺の腕を突然掴んできた。驚きのあまり俺は足を止めてしまうが、レイは嬉しそうに笑っている。

「……レイ」
「なぁに?」
「何じゃなくて。これじゃあカップルだと思われるだろ」
「えっ、嫌なの?」

 どういうわけかレイは不思議そうな表情を浮かべる。
 俺は大きく首を振った。

(そうじゃないんだよ。全然嫌じゃないし、俺は嬉しいんだけど。でも俺たちは兄妹だろ。腕を組むなんて完全にカップルのすることだ……)

 腕を離す様子のないレイに、俺は今日もドキドキさせられている。だけど決して俺は、彼女の手を振りほどいたりはしない。

 そのまま腕を組んだまま、街の中を歩き続ける。こんなの、周りの人達から見れば普通の恋人同士に見えるんだろうな。
 先程見た映画の主人公みたいに今の立場なんて気にせず、彼女に「愛している」と伝えられたらどんなに幸せだろう。
 二人が結ばれたシーンを思い出すと、俺は思わずため息を吐いた。

「ヒルス」
「ん?」
「最近、ため息多いね」

 俺の方に顔を上げて、レイは首を傾げている。

「いや、考え事をしていただけだよ」
「何考えてるの?」
「それは」

 レイのことに決まってる。当たり前だ。
 ふっと俺は微笑み、少し意地悪く言ってみた。

「教えない」
「え、どうして?」
「言わなくても分かることだから」

 俺がそう言うとレイは、チークよりも赤い熱で頬を染めた。
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