サルビアの育てかた
 呆然と俺が立ち尽くす中、レイは変わらず店員とアクセサリー選びに夢中になっている。

(レイはきっと、俺たちの本当の関係について勘付いている。そうじゃなきゃ、最近のレイの言動に説明がつかない。もしそうだとしたら、レイはどこまで知っているんだろう。自分が元孤児だということは分かっているのかな。生みの親の存在や自分の過去の出来事についても知っているのか? レイと話したいけど──やっぱり父さんと母さんのことがあるから、まだ面と向かって話せないよな……)

 頭の中でぐるぐるそんなことを考えていると、レイが俺の方に歩み寄ってきた。バッと俺の右手を握り、

「ヒルス。こっち来て」

 嬉しそうに俺の手を引いて来る。

「欲しいもの、見つかったのか?」
「うん。これがいいなって」

 レイが指差した先には、ガラスケースの中でゴールドに光るネックレスがあった。仲良くふたつ並んでいたんだ。

「これが欲しいの」
「うん、いいけど。ふたつも?」

 綺麗に輝くネックレスは、ペアで売られていた。俺がじっとそれを見つめていると、女性店員が営業トークで説明を始める。

「こちらはカップルやご夫婦の方に大変人気の商品なんですよ。仲が良いお二人にもきっとお似合いですね。お手に取ってみますか?」

 レイは嬉しそうに頷いた。
 店員に言われるがまま金のネックレスを手に取ると、とても軽くて繊細で、少し光に当てただけで美しい輝きを反射させた。
 俺がアクセサリーを見つめていると、レイが顔を覗き込んでくる。

「ヒルスと一緒に付けたいな」
「えっ」

 そんなことを可愛い声で言われてしまったら、俺は何があってもレイにプレゼントしてあげるしかない。
 俺は平静を装いつつも、心の中では飛び跳ね、踊り狂い、ガッツポーズをして大興奮していた。

「仕方ないな。いいよ、買ってあげる」
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