サルビアの育てかた
 俺はおもむろにレイの腰と背中に両手を回し、もっと彼女を包み込みたいと思ってしまった。抱き締めると自然とお互いの顔が近くなる。
 目を逸らすことなく、レイは俺の瞳をじっと見つめてきた。彼女の吐息が届くほどの距離で居続けると俺の理性が抑えられなくなる。

(どうしてレイはこんなに可愛いんだろう)

 なんの考えもなしに、欲求のまま俺がレイの唇に近づこうとすると──

 顔を赤くしながら彼女は、欲に走ろうとする俺の口をまたもや人差し指で止めるんだ。

「だめだって言ったでしょ、ヒルス」
「……ごめん」

 そのまま俺は固まってしまう。
 あまりにもレイの顔が近すぎる。彼女の人差し指をどかしてしまえば、今すぐキスが出来るのに。

 全身がどんどん熱くなっていくというのに、今度はレイの方から俺の肩に両腕を回してきたんだ。
 これまでに見たこともないような美しい表情で、レイは俺の耳元に顔を近づけてこう囁く。

「ねぇ。ヒルス……大好きだよ」

 とろけてしまいそうな甘い声。その直後。

 俺の頬にレイのぬくもりと柔らかい唇がそっと重ねられたんだ。
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