サルビアの育てかた
 たった一瞬の、出来事だった。
 何が起きたのか俺が理解する前に、レイは俺から手をさっと離し、背中を向けた。

 彼女の後ろ姿は、何となく赤くなっているようにも見えた。俺と目を合わせることなく彼女は、「おやすみ。自分の部屋に戻るね」
 そう言って俺の部屋から出ていった。

「レイ……?」

 俺は今、何をされた?
 頬に柔らかいあの感触が鮮明に残っている。

(レイは、今、俺に、キスをしたのか?)

 しばらく呆然としてしまい、俺の思考は完全に停止していた。自分一人ではこれがどういうことなのか到底理解出来ない。

 ──気づけば日付が変わっていた。
 どうしようもなく、俺は震える手でスマホに手を伸ばす。頭が真っ白のまま、どうにかメッセージを送った。

《フレア、HELP!》
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