サルビアの育てかた
 こっちは真面目に話しているというのに、フレアはなぜかニヤニヤしているんだ。

「カッコつけてるわねぇ、ヒルス君。でもね、ここまで来ちゃったら、気持ちを先に伝えるのもありなんじゃない? あなたは、レイが十八歳になるまで事実を話さないことにこだわっているみたいだけど」
「それはそうだ。生前、両親が決めていたことだからな」
「分かるわよ、あなたがご両親を想う気持ちも。だけど、今のレイの想いもきちんと考えてあげてね」

 フレアにそう言われると、俺は何も言い返せなくなる。

 戸惑っているんだ。今更想いを伝えたところで何になる? 兄妹なんだから、恋人という関係になるのは違う気がする。家族であるのには間違いないが、これからレイとどういう関係を築いていけばいいのか余計に分からなくなっていく。

 知らずのうちに俺が眉間に皺を寄せていると、フレアはふっと鼻で笑うんだ。

「ほらまた。考えすぎてわけ分からなくなってるわね」
「……まあな。フレアの言う通り、俺はレイのことになると臆病者になるみたいだ」

 自分でも格好悪いと思うが、認めざるを得ない。
 それでもフレアは俺をからかうことはしなかった。

「あなたたちが身に着けてるそのネックレスだって、特別な意味があるんでしょ。何も不安になることなんてないんじゃない?」

 何となく恥ずかしくて俺もレイも、金色の十字架を服の中に入れていたのだが。チェーンの部分をフレアに指差され、俺は赤面した。

「フレアは鋭いな……」
「わたしはレイの応援隊だから。ヒルスには頑張ってほしいだけよ」なんて、フレアは目を細めて言うんだ。

 熱くなる胸の上で、レイとの心を繋げてくれるネックレスだけはひんやりしていて、何となく俺の気持ちを落ち着かせてくれた。
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