サルビアの育てかた
「全てを諦めかけていた頃にね、わたしは孤児院の存在を知ったのよ。カウンセラーから紹介してもらったの。国から正式に認められている施設ではないのだけれど、一人のシスターが個人で運営している院なの。そこで出会ったのがレイだった」

 レイの名を口にすると、母は穏やかな表情になった。

「初めてレイを見た瞬間、なんとなくあの子と重ねてしまって……。髪色と目元が似ている気がしたの。最初はなかなかお話もしてくれなかったけれど、どうしてもレイのことが気になってしまって」

 そこまで話すと、母は顔を前に向けた。あたたかみのある声でゆっくりと語り紡いでいく。

「でもね、レイと何度も会っていくうちにわたしの中で何かが変わったのよ。あの子とレイを重ねて見ていたはずだったのに、いつしかわたしはレイ自身を家族として迎え入れたいと思うようになったの。笑うととても可愛い子で、むじゃきで、少しずつ懐いてくれた。──だから、わたしは思いきって里親になりたいとシスターに申し出たのよ。家族で何度も面談に行ったの、ヒルスは覚えているかしら?」
「ああ、そうだな……」
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