サルビアの育てかた
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辺りはすっかり陽が沈んでしまった。重い足で、俺は夜の町をあてもなく歩いていく。
今日は週末ということもあり、飲みに行くサラリーマンや、人目も気にせずイチャつくカップルなどあちらこちらにいた。
みんな楽しそうでいいよな。俺なんて一人でウジウジしていてなんにも楽しくないのに。
俺は独りトボトボと繁華街を歩き続ける。
「こんばんはー。お兄さん、一人?」
溜め息まじりで俺がぼんやりしていると、突然横から若い女性に声を掛けられた。見た目は素朴だが、口調と表情からして明らかにそういう商売をするストリートガールのようだ。
面倒臭いな。
「悪いけど、俺に声を掛けても無駄だよ。他を当たってくれ」
「えー。お兄さん、イケメンだからいいなぁと思ったのに。それに、なんか寂しそうな顔してたから気になっちゃって。ガールフレンドと喧嘩でもした?」
「ガールフレンド……」
その単語に酷く反応してしまう俺は、レイの顔を思い出して身体が小さく震えた。
「やっぱりそうなんだ! 可哀想~」
「ち、違う。勝手に決めつけるな」
「じゃあ何? 浮気でもされたの?」
「そんなわけないだろ。レイは……」
と、俺はそこから続きを話すのをやめた。
俺はどこまで馬鹿なんだ。全く知らない赤の他人に、私情を話そうとするなんて浅はか過ぎる。