サルビアの育てかた
 二人分のグラスとフォークとスプーンをテーブルに並べてから、俺は小さい声を発する。

「……レイ、悪かった」

 俺のその一言を呟くと、レイの動きが止まった。笑顔なんてものは一切浮かべずに、俺に言う。

「謝らないで。私が悪いんだから」
「……えっ?」
「昨日は変なことしちゃってごめんね。迷惑だったよね。だからずっと私を避けているんでしょう?」
「いや。それは……」

 思わず吃ってしまう。
 確かに避けてはいたが、それは俺の気持ちの問題であって。

「レイが悪いわけじゃないよ」
「でも、帰りも一緒に帰ってくれないし、スタジオでも全然話してくれない。今日のランチだって……ヒルス、どこ行ってたの?」
「どこって。近くのバーガーショップに行っただけだよ」
「誰と?」
「フレアと」
「フレア先生と、二人で……?」
「そうだけど」

 俺がそう答えると、レイはなぜか暗い顔をして俯いてしまう。しばらく彼女は黙り込み、なんとなく変な空気が流れた。

「レイ、どうした?」

 俺が彼女の顔を覗き込んでも、レイは全く目を合わせてくれない。
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