サルビアの育てかた
 大人げない自分に、腹が立った。大きく溜め息を吐いてからもう一度レイを見ると、彼女は怒ったように頬を膨らませている。

「何それ。どうしてロイの話になるの? 気の合う友だちってだけだよ」
「だったらこれからも二人で仲良くすればいい」
「ヒルス……」

 機嫌が悪い俺は、口を開けば開くほど、自分の気持ちとは正反対のことを言い放ってしまう。こんな発言をする自分自身をぶん殴ってやりたいくらいだ。

 レイは暗い顔をしたまま俺から背を向け、大きく首を振るんだ。

「……ヒルスは、何も分かってない」
「は?」
「私の気持ちも知らないくせに!」
「なんだと。レイだって俺の気持ち、分かってないだろう!」
「何も分かってないのはヒルスなんだよ。どうしていつもそうなの? 私はいつだって言葉にして伝えているのに! 全然気づいてくれないんだもの。鈍感すぎてイライラするよ!」
「はあ? お前、何言うんだ……」

 レイは肩が震えるほど息を荒くしていた。

 ──言葉にして伝えている? 鈍感すぎる?

 確かに俺は鈍いところがあるかもしれない。だけど、レイがなんとなく俺たちの関係に勘づいていることや、レイが俺に対して何か特別な感情を抱き始めているのも分かっている。敢えてそのことに触れないのは、レイの気持ちを一番に考えているからなのに。
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