サルビアの育てかた
 無我夢中で行く先を目指して進んでいく度に、俺の息は荒くなっていく。街灯も少なくなっていき、辺りは繁華街と比べてものすごく暗く感じてしまう。
 人がまばらになってきた頃には、道端で寝転がるホームレスや、明らかに目の動きがおかしい奴、ガラの悪そうな男たちが彷徨いていた。
 まさか、こんな所にレイがいるなんて。想像するだけで寒気がする。俺だって足がすくみそうになるほど恐怖を感じるというのに。
 さっさとあの路地裏を確認して、何事もなかったら戻ろう。

 早くレイを見つけたい気持ちと、今すぐにでもこの場から立ち去りたいという恐怖心がゴチャ混ぜになっていた。
 この場にいるだけで浮いた存在である俺は、横を通り過ぎる目つきの悪い奴らにジロジロと見られる。その度に変な汗が俺の顔からじんわりと滲み出てきた。

(お願いだから絡んでくるなよ……)

 この場にいる誰とも目を合わせずに、俺は震える足を目的地までなんとか向かわせる。

 たった数分の距離が、この時だけは途方も無いほど長く感じた。例の路地裏が目の前に迫ってきた時、俺は一度足を止めてしまう。
 繁華街にはよく買い物へ行ったりするが、この区間だけは一度も足を踏み入れたことはなかった。想像以上に雰囲気が重く、いるだけで足が竦んでしまいそうになるほどなんだ。

 だけどスーパーヒーローは、どんな場所にいようとビビるわけにはいかない。守るべき人がピンチだったら助けなければならないし、平穏な時は笑顔を守ってあげるのが使命。
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