サルビアの育てかた
 ここで母は、ふと真顔になる。

「あの子が十八歳になったらね、本当のことを教えてあげようと思うの。実の娘じゃなくて、親のいないレイをわたしたち夫婦が引き取ったこと、全部を……」

 そうか。このことは彼女が大人になったとき、しっかりと家族から真実を告げるのが一番なんだ──そう悟った俺は、二人の気持ちを汲み取って静かに頷いた。

 ──でも、俺たちは気づいていなかった。このとき、物陰に隠れてこっそりと立ち聞きをしている人影の存在があることを……。

 その後しばらくして、やっと報道陣に解放されたレイが戻ってきた。

「レイ!」

 父と母はこれ以上ない満面の笑みで彼女を迎える。

「三位入賞おめでとう!」
「すごいぞ、レイ。さすがうちの娘だ」

 いつもなら子煩悩な父と母をしらけた目で眺めていたが、今日はそんな様子が笑ましく見えてしまう。

「お父さん、お母さん。応援してくれてありがとね。今日はとっても楽しく踊れたよ!」

 汗で少し髪が乱れてしまっていても、彼女の表情は達成感で溢れていて最高に輝いていた。

「レイ」

 両親に囲まれて幸せそうな彼女に、俺はそっと声をかけた。

「今日は、よくやったな」
「ヒルスがいてくれたから、頑張れたんだよ。本当にありがとう」

 礼を言いたいのは俺たちの方だよ。家族になってくれてありがとうな……。
 父と母にとっての希望の光は、俺の中で少しずつ大切な存在となっていった。
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