サルビアの育てかた
 俺が優しくそう返すと、突然レイは笑顔をなくし、涙目になってしまう。息を切らしながらこちらをじっと見つめ、それからゆっくりと俺に抱きついてきた。
 緊張の糸が解けたように、レイの腕の力が抜けていくのを感じ取る。

「レイ、怪我はないか?」
「うん、大丈夫。私……間違えてこのエリアに迷いこんじゃった。急にあの人たちに絡まれて、連れていかれそうになったの。抵抗したら逆上されて……」
「ああ、分かった、分かったから。もういい。怪我がなくて本当によかった。二度と同じことを繰り返すな。二回目の約束。守れるか?」
「……うん、守れる。ごめんなさい」

 俺はもう、これ以上咎めることはしない。さすがにレイだって、どれだけ自分の行動が浅はかだったか分かったはずだ。
 レイは小刻みに体を震わせながら、ゆっくりと頷いた。

 ──平気な顔をしていても、あんなガラの男たちに襲われそうになっていたのだから、すごく怖かったのだろう。強がるところもレイらしい。とにかく彼女が怪我もなく帰ってきてくれて俺は安心した。
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