サルビアの育てかた
「あの時は、どうかしてた。もう二度としないから……」
「うーん。それならさ、弱いお酒も無理して飲まないでね?」
「えっ」
「スタジオのみんなでパブへ飲みに行った日だよ。あの時のヒルス、すごく酔ってたでしょ。覚えてないみたいだけど……ヒルスったら、私にキスしてきたんだよ」
「な、何だってっ?」

 思わず声が裏返ってしまう。全く記憶にない。酔った勢いで、レイにキスをしてしまっただと?
 更なる最低最悪な行動に、俺は自分のことをぶっ飛ばしたくなるほど嫌気がさした。

 それでもレイは、笑顔を絶やさず柔らかい声で言うんだ。

「本当は絶対にだめなんだよ。だけどね、ヒルスだから許せるの」
「……レイ」
「でもやっぱり、今日のキスが一番好きだな。ヒルスからの愛情がたくさん感じられるの」

 そんな風に言われると、正直な俺の体は強い力でレイを抱き締めずにはいられない。言葉すらも素直になるんだ。

「だったら、これからは毎日レイに愛情を伝えるよ」

 こくりと頷くレイの頬にそっと触れ、俺はもう一度彼女の唇に優しく愛を伝えた。

 今まで彼女が隣にいてくれる時間は俺にとっては最高のひとときだった。だけど遂に想いを伝えられたことで、今日は目に映る町の背景さえもキラキラ輝いて見えたんだ。
 この愛おしい手を、ずっと離したくない。守っていきたい。歳を重ねるごとに、レイの存在は俺の中でかけがえのないものになっていくから。
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