サルビアの育てかた


 フラットへ戻り、腹を空かせた俺たちはレイが作ってくれた愛情たっぷりのハンバーグステーキを一緒に食べる。
 冷めたハンバーグステーキをもう一度あたためると少しばかり固くなってしまっていたが、それでも最高に幸せな味だ。そばには、愛くるしい笑顔を向けるレイがいてくれる。どうしようもなく最高の時間だ。

 ──夕食を済ませたあと、俺はひとつ気になっていたことをレイに訊いてみた。

「なあ、レイ」
「何?」
「どうしてレイは知っていたんだ? 本当のことを……。俺の態度から察したのか」

 俺が何となしに問うと、急にレイの笑顔が消え去った。
 重く深刻な顔で口をゆっくりと開くん。

「……ずっと前に、ある人から聞いたんだ」
「ある人?」

 なぜか言いづらそうに、それでいて、悲しいような表情を浮かべてレイはゆっくりと話し続ける。

「──あれは、私が十二歳の時かな。私たちが血の繋がらない家族だったことも、私が元々孤児院で暮らす親なしだったことも。スクールの、あの人から聞かされたの」

 レイの声はとても沈んでいた。
 彼女から聞かされた話は、あまりに衝撃的で許し難く。何よりもその事実を知らなかった俺は、自分が鈍感なことにとても悔やんでしまう事態になる。

 ──まさかレイが、ダンススクールで酷い嫌がらせを受けていたなんて、俺はこの時まで全く知らなかったんだ。
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