サルビアの育てかた
──夕食を取りながら、俺はなにげなくレイに問いかけた。どうして自分自身の事情を知っていたのか、と。
すると彼女は一瞬だけ憂いた表情を浮かべた。
「あの人に……メイリーから聞いたの」
「……何?」
「私が初めてステージでソロを踊ることになったときにね、メイリーの態度がすごくキツくなったの。ううん、本当はそれよりも前からずっと厳しかった。私が一生懸命練習してもっとダンスが上手になればメイリーも認めてくれるかなって考えてたけど……そうじゃなかった。彼女は最初から、私がダンススクールにいるのが許せなかったみたい」
言葉をひとつひとつ迷いながら選ぶように、レイはゆっくりと話し続ける。
「ある日のレッスン後に急に呼び出されて……。そこで、私の出生のことを聞かされたの。私は親なしで元々は孤児院で育ったこと。三歳のときに、お父さんとお母さんに引き取られたこと。だから私は……血の繋がらない娘なんだって……」
「レイ」
震える彼女の話を遮り、俺はレイのそばに歩み寄る。そっと彼女を抱きしめ、小さく首を横に振った。
「分かった。それ以上はもういい。悪かったな……」
そんなことがあったから、レイはある日突然家族に反抗するようになったのか。
いや、違う。あれは単なる反抗期なんかじゃなかった。事実を家族でもない赤の他人から聞かされ、戸惑いと不信感、嫌悪感、悔しさなどたくさんの感情が彼女の心を蝕んでいき、結果俺たち家族とどう接していいのか分からなくなってしまったのだろう。
レイがスクールを辞めたのも、全部そのことがきっかけだったんだ。あんなに頑張っていたダンススクールにレイが二度と戻らないと譲らなかったのは、あの女の存在があったからなんだ。
俺は今まで何も知らなかった。どうしてあの時、もっと彼女に問い詰めなかったんだろう。
当時十二歳の彼女がどれだけ苦しい想いをしていたか。
助けてやりたかった。レイが一番つらい時期に何もしてあげることが出来ていなかった。こんな自分の鈍い性格に腹が立って仕方がない。
すると彼女は一瞬だけ憂いた表情を浮かべた。
「あの人に……メイリーから聞いたの」
「……何?」
「私が初めてステージでソロを踊ることになったときにね、メイリーの態度がすごくキツくなったの。ううん、本当はそれよりも前からずっと厳しかった。私が一生懸命練習してもっとダンスが上手になればメイリーも認めてくれるかなって考えてたけど……そうじゃなかった。彼女は最初から、私がダンススクールにいるのが許せなかったみたい」
言葉をひとつひとつ迷いながら選ぶように、レイはゆっくりと話し続ける。
「ある日のレッスン後に急に呼び出されて……。そこで、私の出生のことを聞かされたの。私は親なしで元々は孤児院で育ったこと。三歳のときに、お父さんとお母さんに引き取られたこと。だから私は……血の繋がらない娘なんだって……」
「レイ」
震える彼女の話を遮り、俺はレイのそばに歩み寄る。そっと彼女を抱きしめ、小さく首を横に振った。
「分かった。それ以上はもういい。悪かったな……」
そんなことがあったから、レイはある日突然家族に反抗するようになったのか。
いや、違う。あれは単なる反抗期なんかじゃなかった。事実を家族でもない赤の他人から聞かされ、戸惑いと不信感、嫌悪感、悔しさなどたくさんの感情が彼女の心を蝕んでいき、結果俺たち家族とどう接していいのか分からなくなってしまったのだろう。
レイがスクールを辞めたのも、全部そのことがきっかけだったんだ。あんなに頑張っていたダンススクールにレイが二度と戻らないと譲らなかったのは、あの女の存在があったからなんだ。
俺は今まで何も知らなかった。どうしてあの時、もっと彼女に問い詰めなかったんだろう。
当時十二歳の彼女がどれだけ苦しい想いをしていたか。
助けてやりたかった。レイが一番つらい時期に何もしてあげることが出来ていなかった。こんな自分の鈍い性格に腹が立って仕方がない。