サルビアの育てかた
 建物の裏にある駐輪場へ一人でバイクを停めに向かう。ここの駐輪場は電灯が少なく、夕方を過ぎるといつも薄暗くなるのでちょっとばかし気味が悪い。

 不意に、背後から誰かの足音が聞こえて来た。

「ヒルス」
「うわっ、メイリーか」

 思わぬ相手の登場に少々驚いてしまう。
 メイリーは俺を見てくすくす笑うんだ。

「今日もレッスン頑張ろうね」
「あ、ああ」

 みんながスクール前に集まっているのに、なぜメイリーだけはここにいるんだろう。
 俺はそそくさとその場から立ち去ろうとするが、突然、左腕を掴まれてしまう。

「ねぇヒルス」
「なんだ?」
「この前の大会で、あたしのダンス見ててくれた?」
「えっ? あ、ああ。見てたよ」

 さりげなくメイリーの腕から離れる。
 大会当日はレイばかり気にしていたが、メイリーのダンスも見ていたのはウソではない。

「あたしのダンス、どうだった?」
「どうだったって……よかったよ」
「本当に?」

 メイリーはなぜか怪訝な顔をする。
 メイリーは毎年素晴らしいダンスを披露して、いい結果もたくさん残してきた。いつも必死に練習しているのも俺は知っている。
 だけど──メイリーは必死になりすぎて周りが見えなくなることがある。俺はそのことが少し心配だった。
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