サルビアの育てかた
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それから半年の月日が流れる。
俺とレイの関係はますます深いものになっていた。
あの日を境に、レイは毎日のように俺の部屋で過ごすようになった。
朝目覚めると、レイがいつものように朝ごはんを作ってくれている。玉子焼きのいい香りが部屋中に溢れていて、目覚めがとてもいいんだ。
歯を磨き顔を洗ったあと、俺の足は自然とキッチンの方へと向かって行く。
レイは、ちょうど出来上がった玉子焼きをフライパンから皿に移している。
いつもと変わらない幸せな日常。今朝は一層輝かしく見える。
「レイ、おはよう」
俺はたまらず、背後から愛おしい彼女をギュッと抱き締める。
「あっ……おはよう、ヒルス」
可愛らしい声で返事をすると、レイは手を止めて俺の方に顔をゆっくりと向けた。ほんのり頬をピンクに染めて、目を細めるレイの反応が愛しくて仕方がない。
いつもならそんな彼女の唇にそっと愛を伝えるのだが、今日は少し違う。すっと顔を近づけ、レイの頬に優しくキスをした。
すると彼女は恥ずかしそうな、少し驚いたような顔になる。
「あの、ヒルス……」
「お返し。ずっと前に、レイも俺にしてくれただろ?」
「やめて、恥ずかしい」
そう言いながらも、レイの口角は緩んでいるんだ。どこまでも可愛らしい表情を見せてくれる彼女に、俺はそっと口づけをした。
至福のひととき。毎日していても飽きることはなく、むしろ日に日に愛情が大きくなっていった。こんな甘い口づけをレイと交わすことが出来るのだから。
「いい匂いがする」
「うん。ご飯出来たよ。一緒に食べよう?」
「そうだな……」
俺は頷くが、彼女を抱擁するこの両手が離れようとしない。抱き締める力を更に強める。
「ねえ、ヒルス」
「何?」
「照れちゃうよ」
「いいよ。もっと照れて」
「……もう」
本当はもっとこうしていたかった。
だけど時間だけは、俺たちの幸せのひとときを伸ばしてくれることは決してない。