サルビアの育てかた
 話が終わったあと、ジャスティン先生は思い出したようにレイを呼び止めた。

「レイ。最後にひとつだけ、大事な話があるんだけどいいかな」
「なんですか?」

 先生の顔はいつになく真剣だった。そんなジャスティン先生の様子を見て、俺はハッとした。
 この場から立ち去った方がいいと、瞬時に判断する。

「俺、外で待ってますよ」
「いいよヒルス。ここにいてもらっても」
「でも──大事な話なんですよね」
「君は聞かなくて良いのかい?」
「はい、二人で話をしてください。俺は後から聞きます」

 先生は優しい笑顔で、ゆっくりと頷いた。

「レイ、俺は車で待ってるから」
「うん、分かった」

 ──ジャスティン先生はきっと、あの事をレイに話すに違いない。

『レイは、プロでも通用するほどの可能性を持っている。もしも彼女が戻ってきた暁には、全力でサポートしたいと考えている』

 スクールの廊下を歩く途中、いつの日かジャスティン先生がそんな話をしていたのを俺は思い出していた。あの日の先生の目は本気だったのを、俺は今でも鮮明に覚えている。
 レイは一体、どういう返事をするのかな。気になるけど──俺はその話し合いの場にいることはせず、レイ本人が先生としっかり話し合いをして、自分の判断で決めてほしいと思ったんだ。
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