サルビアの育てかた
 車に戻って時間を潰そうと思い、エントランスの扉を開けた時。外であいつが──あの女が立っているのが目に入った。
 こちらを振り返り、ニヤリと笑いながら近づいてくるんだ。

「ヒルス! 待ってたよ」

 そうだ。こいつに話があるんだ。

 相変わらず甲高い声を出して、大きな目を向けてくるメイリー。
 俺は思わず眉間に皺を寄せる。

「話があるんだよね? 一緒にご飯でも食べに行ってゆっくりお話する?」

 俺を下から覗き込むメイリーは、やたらと顔を近づけてきた。
 さりげなく距離を置きながら、俺は低い声で口を開く。

「いや、ここで手短に話す。あんた、レイに謝ることはないか」
「えっ? 何かしたっけ?」
「……レイに、余計なことを言った覚えはないのか」

 わざと厳しい口調で、俺は怒りの感情を表に出さずにはいられなかった。
 そんな俺の様子を見て、メイリーは腰に手を置く。

「えー、やだあ……。もしかして、結構昔の話してる?」

 俺が何に腹を立てているかメイリーは察したようだが、全く悪気もなさそうにくすくすと笑う。
 この態度を見て俺の怒りは更にヒートアップしてしまう。

「あんた何を考えているんだ。こんな重大な話を、全く関係ない奴に聞かされたレイの気持ちを考えてみろ!」
「そんなに怒らないでよ、どうせいつか言おうとしてたんでしょ? あたしはただ、隠し事しながら家族ごっこ(・・・・・)してるなんて間違ってると思っただけだもん」

 へらへらしながらそう言うメイリーに、俺の中でプツンと何かがぶち切れる音がした。

(よくもそんなことが言えたな‼)

 殴り飛ばしたい衝動を理性だけでどうにか抑え込んだ。全身の血が熱くなっていく。
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