サルビアの育てかた
「あんた、自分と他人を比べて虚しくないのかよ」
「……えっ?」
「他人と比較すればするほど自分の価値を下げるだけだぞ」
「どういうこと……それ」
「てめぇと同じ人間なんていないんだから、人と比べるなって言ってんだよ」

 俺の心は苛つきで溢れかえっている。メイリーを睨み付け、どうしても感情が抑えきれない。

「もしあんたが勝ち負けとやらにこだわっていたとしたら、一生レイには勝てない。あいつは最初からあんたとも、他の誰とも勝負なんかしてない。レイは自分らしくひたむきに頑張っているだけだ」

 俺がそう言い放つと、メイリーは顔を真っ赤にして歯を食いしばった。瞳を濁して、俺を睨むように目付きが鋭くなる。

「ヒルスは、そんなにあの子のことが好きなの?」
「あんたには関係ない」
「……関係あるよ」

 メイリーは神妙な面持ちに変わると、突然こんなことを口にするんだ。

「あたし、あなたのことがずっと好きだったの。今でも……」

 蚊の鳴く様な声だった。
 この女、正気なのか。
 俺は冷たい人間だから、酷い仕打ちをした人間の言葉など何も響いてこない。
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