サルビアの育てかた
 この女、どこまでストーカー気質なのだろう。恐怖すら感じたが、この女の誘いを承諾するわけにはいかない。
 俺はなんとか平静を装い、ズボンのポケットに手を入れて圧の掛かった声を出す。

「それがどうした。レイに過去のことをバラすつもりか」
「そうよ。あの子、また傷つくんじゃないの?」
「……レイはそんなに弱い人間じゃない」
「へぇ、じゃあ言っちゃおうかな」

 どんなに脅されようとも、俺はこんな女と二人でどこかへ出掛けるなんてしたくないし、何よりレイを裏切るような真似は絶対にしたくなかった。

「好きにしろよ……」

 俺は強めの口調で言い放ったが、心臓だけは発作が起きてしまうのではないかというほどの爆音がしていた。
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