サルビアの育てかた
 
「まあいいや。このこと、レイにはまだ言ってないんでしょう?」
「そうだよ。あいつが大人になったら──十八になったら、うちの親が打ち明けるつもりだ。お願いだから、メイリーはレイにこのことを話さないでくれ」
「スクールのみんなにも?」
「他の誰にも言わないでほしい。隠しているわけじゃないけど、あいつはまだ子供だろう。重すぎる話だ。今はまだ、打ち明けるべきじゃない。分かるだろ?」
「……うん、そうね」

 一瞬、沈黙が流れた。すると、スクールの窓からジャスティン先生が顔を出した。すぐ俺たちの存在に気づくと、
「おーいヒルス、メイリー! レッスン始めるよ」

 呼びかけられ、俺たちはハッとしたように急いでエントランスへ駆けていく。

「メイリー、これは俺たちだけの秘密だぞ。いいな?」
「ええ……分かったわ」

 もはや、メイリーを信じるしかない。

 俺は何事もなかったかのように、その日いつも以上にレッスンに集中して、気を紛らわす他なかった。
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