サルビアの育てかた
 モラレスに圧倒されながらも、俺はどうにか口を開いた。

「あの、モラレスさん。ちょっといいですか」
「ん~? 君は誰?」

 俺の前に立つと、モラレスは顔をまじまじと眺めてくる。眼力もオーラも、そしてこの大きな身体もとんでもない迫力だ。

「ああ、もしかして! ジャスティンから聞いてるわ。レイちゃんのお兄さんよね。やだぁ、すっごいイケメンじゃないの。好きになっちゃいそう!」

 冗談なのか本気なのか分からないが、モラレスはテンション高くそう言うと、俺にも抱きついてくる。驚き、全身がビクビクしたが、なぜか嫌だという拒否反応が出ない自分にもびっくりだ。

「ねえねえ、よかったら今から三人で一緒に踊らない?」
「えっ」
「ジャスティン、動画撮ってよ。記念に!」
「うんいいよ」とジャスティン先生はモラレスからスマートフォンを受け取ると、スタジオの一番広い練習場まで移動する。

「じゃ、アタシの最近発表した曲流して! レイちゃん、ヒルス君、アドリブで踊れる?」
「は、はい」

 勢いに流され、俺とレイは世界的アーティストと急遽ダンスをすることになってしまった。

(どうして俺まで……)

 これでは契約を断るタイミングを完全に掴めない。
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