サルビアの育てかた
 ──ダンスが終わったあと、モラレスは更にとんでないことを言い始めるんだ。

「ヒルス君、あなたのダンスも最高ね! アタシとっても興奮しちゃったわ」
「はあ……それはどうも」
「決めたわ。あなたにもアタシのバックダンサーとして踊ってもらうことにする!」

 俺たちは口を開けたまま何も言えずに顔を見合わせた。
 汗が額から滲み出て止まらない。深い吐息と共に、それは床へ静かに滴り落ちていった。

 この時に俺たちがちゃんと断っていれば、あんなことにはならなかったのかもしれない。
 だけどこれはモラレスが悪いわけでもなく、断りきれなかった俺たちのせいでもない。残酷な運命に逆らえず、決して逃げ切れない未来に、ただただ黙って立ち向かっていくしかなかったんだ。
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