サルビアの育てかた



「ヒルス先生、本日もありがとうございました」
「ああ、お疲れ。来週の大会が楽しみだな、ロイ」

 みっちり四時間、マンツーマンで俺のレッスンを受けていたロイは、全身汗でびっしょりだった。練習場内は熱気で溢れ返っている。
 タオルで体を拭くロイの表情は満足気だ。

「ロイが十五歳以下の大会に出られるのは今年で最後になるな」
「そうですね、せっかくだから良い結果を残せるようにしたいです」

 更衣室にも行かずに、俺たちはその場で着替え始める。いちいち移動するのが面倒なので二人の時はいつもそうだ。自然と二人で会話をする機会も多くなる。

「ヒルス先生。レイさんが十八歳になったら、プロデビューするんですよね。凄く楽しみですね」

 ロイの何気ない一言に、俺はハッとした。
「そうだな」と堅くなって返事をするが、今の俺はきっと苦い笑いを浮かべている。

「モラレスさんの新曲に、ヒルス先生もバックダンサーとして出演するんですよね! 本当におめでとうございます」

 目を輝かせるロイを前にして、俺の視界は霞んでいく。
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