サルビアの育てかた
 ──結局あの日俺たちは断りきれず、勢いに負けて半強制的にモラレスのバックダンサーとして踊ることになってしまった。
 俺はイントラの仕事があるのを理由に次の新曲のみ踊る契約となったが、レイはこれから何年も専属ダンサーとして活動する。不安や心配事は残ったままだ。

「まあ、断れなかったのが本音なんだけどな」
「えっ、乗り気ではなかったのですか?」

 ロイが目を見開くのをよそに、俺は静かに頷いた。

「ロイも知っているんだろう。レイには複雑な事情があるんだ。有名になった後を考えると、あまり前向きになれなくてな」
「……そうですか」

 ロイの表情が少しばかり曇っていく。それでも、すぐにパッと顔をあげてにこやかに俺の顔を見るんだ。
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