サルビアの育てかた
◆
次の日。
レイは朝からレッスンが入っているので、二人でスタジオに向かった。
朝は特に身震いしてしまう。
俺のコートのポケットの中にレイが手を入れてくるので、冷たくなってしまった彼女の指先を優しく握りしめる。俺の手は、自然とあたたかくなった。
煉瓦造りのハウスが立ち並ぶ住宅街。あちこちの庭からコスモスの香りが漂ってきた。
こんな癒やしのひとときを噛み締めていると、繁華街へ出る直前、前方から若い女子二人がニコニコしながらこちらに近づいてきた。
──まただ。
俺は直感でこの後、あの二人に話しかけられると悟った。構えていると、ばっちり目が合い、興奮気味にその二人組は俺とレイの前に並ぶ。
「あの……すみません」
ほら、きた。
俺とレイは、さり気なく互いの顔を横目で見つめ合う。
女子二人は顔を赤らめながら話しかけてくるんだ。
「ヒルスさんとレイさんですよね? SNSでお二人のダンスを見ました。凄く素敵で……あの、ファンになりました!」
「ああ、どうも。ありがとう」
俺が軽く返事をしただけで、二人は歓喜しながら声を張り上げた。
「こんな所で会えるなんて嘘みたいです。動画で見るよりもお二人とも格好良くて可愛くて……!」
「そう言ってもらえて嬉しいですよ」
レイが二人に微笑みかけると、女子たちは失神してしまうのではないかというくらい黄色い声を上げる。
まだデビュー前なのに。