サルビアの育てかた
モラレスのSNSの反響は凄まじかった。今まで普通に街を歩いて声をかけられることなんては一度もなかった。あの日以来、こういうやりとりを既に何度もしている。
「お二人のデビュー、楽しみにしていますね」
「応援しています!」
そう言いながら握手を求められ、俺もレイもさっと手を出した。女子たちの手を握っただけで、二人の顔は見る見る真っ赤になり、涙を流す始末。
「ありがとうございます!」
「もう一生、手洗いません!」
「いや……手は洗ったほうがいいぞ。このご時世だし」
俺が冷静にツッコむと、女子二人組は更に奇声を上げて大喜びだった。
この上ないほどの幸せそうな笑顔を浮かべながら、二人はその場を去っていく──
俺とレイは今日も圧倒されていた。
「そんなに私たちって有名になっちゃったのかな……」
「モラレスの知名度が高いから仕方がない。今度から外を歩く時は顔を隠した方がよさそうだ」
この状況に戸惑いながらも、俺とレイは急ぎ足でスタジオを目指した。
レイの手はもう一度、俺のコートのポケットの中へ入ってくる。ほんの少し触れ合っただけで、俺たちはぬくもりを分かち合えた。