サルビアの育てかた
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極寒の中、今にも凍え死にそうな私を優しく抱き上げてくれたその人は、悲しみの雫をたくさん流していた。
その雫は、私の顔にぽつりと滴り落ちてきたの。
それなのに、なぜか私の心があたたかくなる。
『怖かったでしょう? 暗くて寒くて寂しかったでしょう? すぐに助けてあげるからね……』
優しい言葉。
私は泣くことをやめた。力がなくなっただけじゃなくて、心の底から安心したから。もう、泣き叫ぶ必要なんてないの。
あたたかい腕の中に包まれながら、私はどこへ連れて行かれる。
その人が歩くたびに、心地よい振動が伝わってきた。とても不思議な感覚になる。抱っこしてもらっているだけで、どうしてこんなにも安心するんだろう。
誰かの手は、私にとって恐怖そのものだった。
手は、私のことを突き放す。
手は、私のことを邪魔者扱いする。
手は、私のことを叩いてくる。
手は、私のことを殴ってくる。
手は――悪魔のようなあの手は、怖くて恐くてたまらないモノ。
ずっと怯えていたはずなのに。この人からは恐怖なんていうものはひとつも感じられない。愛情のようなものがたくさん伝わってきたんだよ。
『もう、大丈夫だからね。生きて。生きるのよ。お願い……』
暖炉の火が揺れるあたたかい部屋の中で、その人は私に向かってそんなことを言う。