サルビアの育てかた
第七章



 天気の良い日の浜辺は、なんて心地がいいのだろう。陽の光が反射して、俺とレイの身体を仄かにあたためてくれた。
 海面に輝きを放ちながら音を奏でる波打ちは、美麗という言葉がよく似合う。

 だけど俺の心は、それとは正反対な色を持っている。ダークな感情が俺の中を染め上げた。

「また、何か考え事してる」

 俺の手を握り、レイは心配そうな顔をしてこちらを見上げてくる。

 今日のレイはいつも以上に可愛くて綺麗だ。以前のロンドン大会で三編みのお下げをしていた時と同じヘアスタイルで、ナチュラルメイクが自然に溶け込んでいる。俺は、普段と違うレイの姿にドキドキしてしまう。


 出かける前、レイは照れくさそうに言った。

『前にヒルス言ってたよね。もう一回、おめかしして欲しいって。少し準備に時間が掛かっちゃったけど、今日は特別な日だから頑張ってみたよ』

 今日はレイの十八歳の誕生日。特別で、レイにとっても俺にとっても大切な日になる。
 本当は楽しく過ごしたい。だけど俺には気がかりなことが頭の中にずっと残っていて、なかなか離れずにいる。
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