サルビアの育てかた
「本当の兄妹ではないんですよねえ。ほら、レイさんって元々は孤児だったんでしょう?」

 ニヤニヤしながら、男は更にもう一枚写真を鞄から取り出してきた。そこに写っていたのは、先日俺とレイが孤児院を訪れた日の姿だった。
 二人共ばっちり顔が映されている。

「良いですねぇ。虐待の果てに捨てられた(・・・・・・・・・・・)悲劇の少女が、里親の元で共に暮らしていた義理の兄と愛を育む……素晴らしい記事になりますよ」
「ちょっと待て」

 正直レイが孤児だったことや、俺たちの関係について世間に知られようがどうでもいい。覚悟の上だ。
 しかしなぜ? この男は、レイの過去まで知っているのか。

 俺は震えながら男に問う。

「どうして、レイが酷い仕打ちをされていたことを……」
「あっはは。いやぁ、いいネタを売ってくれる相手が現れましてね。彼女のおかげで(・・・・・・・)面白いネタがたくさん掴めましたよ」

 ──いいネタを売ってくれる相手? 彼女のおかげ?

(まさか)

 考えなくても、すぐにその相手が誰なのか分かってしまった。途端に怒りが込み上がる。

『覚えておいた方がいいよ、ヒルス。女を怒らせると大変なことになるんだからね』

 メイリーと言い合いになったあの日──あの女が吐き捨てた台詞を瞬時に思い出した。
 レイが虐待されていたことを知っているのは、俺とシスターとあの女だけだ。
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