サルビアの育てかた
 記者の男は、急に鋭い目付きに変わった。

「ヒルスさんたちのご実家が全焼してしまったことがあったでしょう。あの時にジャスティン氏に取材を申し込んだんですけどね、その時の態度があまりにも失礼で。心底驚きましたよ。『人の不幸をネタにするなんてありえない。君たちはもっとまともに生きなさい』なんて言われてしまいまして。我々は、必死に仕事をしているんですよ。馬鹿にされたみたいで心外です」
「だからって、ありもしないことを記事にするのか!」

 俺が語気を荒げると、記者は深く息を吐いた。

「ですから再三申しているでしょう。出来るならヒルスさんたちのことをネタにしたいんですよ。締切もありますし、どちらかのネタを使わせてもらわないと。この際ヒルスさんが選んでくれませんか?」

 投げやりな言いかたで、男はじっと俺の目を見つめてくる。
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