サルビアの育てかた
 あの日から、俺はずっと考え込んでいる。どうすればいいのか分からず、夜もなかなか眠れずに解決策を探してみせるがなんの答えも出ないんだ。
 今日は特にそうだった。レイが幸せそうに隣にいると、この明るい笑顔がいつか壊れてしまうのではないかと不安になってしまい、せっかくの彼女の誕生日なのに俺は気分が沈んでいた。

「さっきからずーっと目がどこかに行ってるね」
「……へっ?」
「だってヒルス、遠くを見たまま返事もしてくれないんだもん。私の話、聞いてた?」
「いや……ごめん。何だっけ」

 何も聞いていなかった。
 レイは少し不機嫌そうに頬を膨らませている。

「すまん。これじゃせっかくの誕生日が台無しだな……」
「本当だよ」

 怒った顔をしながらも、どこか俺を心配そうに見つめる彼女を見て申し訳ない気持ちになった。

 今日は……今日だけは余計なことを考えないほうがいい。
 レイの十八歳の誕生日。この日は彼女にとっても、俺にとっても大切な一日になるのだから。

 俺はそっとレイの身体を抱き寄せる。

「ごめんな。今日はもう、レイの誕生日のことだけを考えるから」
「……そうしてくれなきゃ困る」
「怒らないで。仲直りしよう」

 優しく彼女に囁き、俺はレイにぐっと近づいて美しく光るその瞳を見つめた。
 ほんのり頬をピンクに染めるレイは、今度は可愛らしい表情に変わる。

「仲直りって……どうやってするの?」
「こうやってするんだよ」

 そう言いながら俺は、レイの唇にたくさんの愛を捧げた。

 波の音にかき消されながらも、俺とレイが交わす愛は確かに二人の周りで響き渡っていた。
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