サルビアの育てかた


 ヒルスがダンススタジオで働くようになってからも、私は変わらずスクールに通い続けた。いつも同じクラスでヒルスと一緒に練習していたから、彼がいなくなって寂しさはあったけど……クラスのメンバーもいるし平気。
 ヒルスもお仕事を頑張ってる。私ももっとたくさん練習しよう。そう心に決め、今まで以上にダンスの練習に励んだ。

 ──そんな日々を過ごし、私が十二歳になったある日のこと。

「え……私が、ですか?」
「うん、ぜひ君にお願いしたいんだ」

 ジャスティン先生は練習場の中央に立ち、私の目をしっかり見てそう言った。驚きのあまり、私は口をぽかんと開けたまま。

「今度のイベントは比較的大きいけど、レイにはそこでセンターとソロをお願いしたいんだよ!」

 もう一度、先生は言葉を放つ。
 クラスのメンバーが揃って私を見つめてきた。

「レイが初めて主役になるんだね!」
「楽しみだな」
「ソロ、期待しているわ」
「レイならめちゃくちゃクールにキメてくるんだろうな!」

 私が返事をする前に、仲間たちが次々と声援を送ってくれる。

 どうしよう、ドキドキする。まさかソロを任される日がくるなんて、思ってもみなかったから……。

 私は身長が百五十㎝ほどの小柄体型だ。グループイベントでパフォーマンスをするときは、いつも前列の隅で踊ることが多い。
 でも、ソロは違う。ステージ上で、私一人が踊ることになるの。期待に応えられるような派手なダンスが披露できるのかという不安はもちろんある。
 だけどせっかく先生からの指名を受け、みんなからも応援されている。きっと、いい経験になるよね。

 先生の目をしっかり見つめ、大きく頷いた私は迷いなく元気に答えた。

「頑張ります!」
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