サルビアの育てかた
 小さく舌打ちをしながら、メイリーは早足で通りすぎていく。

「あの……今日もお疲れさま」

 彼女の背中に挨拶を向けても、何も返してくれない。

 ヒルスがスクールにいなくなった頃からかな。メイリーは私にだけあからさまに冷たい態度を取るようになった。挨拶をしてもこうやっていつも無視されるし、話をするときも常にイライラしているみたいなの。他のメンバーにはそういう態度を取っているようには見えないのに。
 私、何か悪いことしたかな。だけど、どうしても思い当たる節がない。同じクラスのメンバーだし、仲良くしたいって思っているのに。

 夜の町に向かって、コツコツとヒールの音を立てて歩いていくメイリーの後ろ姿は冷たかった。私がぼんやりその背中を眺めていると──突然、メイリーが立ち止まる。そして、鋭い目つきで私の方を振り返った。

「レイ。ちょっといい?」
「……うん、なに?」
「今回、センターとソロを任されたからって調子に乗らないでよね」
「えっ」

 調子になんて、乗っていないよ。そう返そうとしたが、寸前になってその言葉を飲み込んだ。
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