サルビアの育てかた
 落ち込んでいると、背後からスクールのドアが開く音がした。

 あれ? まだ誰か残っていたんだ。

 ドアの方を振り向いてみると、そこにはライクさんが立っていた。インストラクターになっても相変わらずサングラスをかけていて、表情がよく分からないけれど、私の顔をじっと見ているみたい。

「よお。レイ、まだいたのか」
「はい。ライクさん、遅くまでお疲れ様です」

 今さっきのことを引きずっていて、声が暗くなっちゃった。
 ライクさんは私の前に立つと、じっと見下ろしてきた。

「何かあったか? 元気なさそうだな」
「あ、いえ。あの……」

 曖昧に返事をしようとしたけれど、そこで一度口を止めた。
 ライクさんは今、立派に先生をやっているんだよね。
 どうしようか少し考えたけど、このモヤモヤを晴らしたい。だから思いきって、ライクさんに訊いてみることにした。

「あの、ひとついいですか?」
「ん?」
「私のダンスって……どう、ですか」
「どうって?」

 唐突すぎたかも。この問いに、ライクさんは首を傾げる。

「私なんて実力がまだまだなのは分かっています。下手くそなのも……もっと練習が必要なのも。でも、私のダンスで良いところというか。長所、みたいなものはないかなと思って。すみません、何を訊きたいのか自分でもまとまっていなくて」

 そこまで一気に話してから、急に恥ずかしくなってしまった。
 何これ、こんなんじゃライクさんを困らせちゃうよ。「やっぱりなんでもないです」と、質問を取り消そうとした。
 けれどライクさんは、口角を上げてそっと私の肩に左手を置いて言うの。

「おいおい、誰が下手くそだって? そんなわけねえだろ。おれはレイのダンス、すっげえ好きだぜ。いつも楽しそうに踊ってるし、見ていて惚れ惚れするんだよな。おれだけじゃなくて、ジャスティン先生もヒルスも、他の生徒やインストラクターも、みんながレイの実力を認めてるぜ」
「……そうなんですか?」
「今さら何言ってるんだよ。そもそも認められたから十歳で特待クラスに入れたんだろ? そんなスピードで上がれた奴なんて、今までにレイくらいしかいねえ。自信持とうぜ!」

 がははと大笑いするライクさんを見て、私まで笑みが溢れる。
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