サルビアの育てかた
「家族ごっこなんかじゃないから。私の家族は、大切なことをたくさん教えてくれた。あなたには一生かけても分からないと思うけど!」

 殆ど息継ぎもせずに、レイは大きな声で女に向かって叫んだ。

 そんな彼女を、まるで汚いものを見るかのような冷たい眼差しで女は口を開くんだ。

「……生意気な小娘ねぇ……」

 レイの背中が再び震え始める。
 そんなの全く気にする様子もなく、女は大きくため息を吐き、暗い声でこう言い放った。

「あんたなんか、生んでやらなきゃよかったわ」

 女は捨て台詞を吐いた後、とぼとぼとその場を立ち去っていった──

 レイは膝から倒れ込み、呼吸を乱した。涙をたくさん流し、しばらくの間その場で唸り声を上げる。

 そんな彼女にどう声掛けをしていいか分からず、ただ優しく抱きしめることしか出来ない。

 怖かっただろう。悲しかっただろう。

 悪魔が投げ捨てた言葉は、まるでレイの心を鋭い刃物で突き刺しているかのように残酷なものだった。

 レイのトラウマは、更に彼女を苦しめることになってしまったんだ。
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