サルビアの育てかた


 引っ越し当日。
 朝から忙しないが、作業は順調だった。運搬はジャスティン先生やフレア、スタジオの仲間たちが手伝いに来てくれて、ランチ前には新居に移ることが出来た。みんな午後から仕事があるというのに来てくれるのだから感謝しかない。

「今度きっちりお礼してもらうからね」なんてフレアには言われたが、もちろん俺はそのつもりだ。


 みんなが帰った後、フラットの四階にある新しい部屋を見てレイは興奮気味に言う。

「お家、すごく広いよね。三ベッドルームもあるけど使いきれないよ?」

 キッチンに食器など細かいものを運びながらレイは部屋を見回した。
 そんな彼女に俺は、ふっと微笑みかける。

「そうだな。二人だと広すぎるかもな……」

 ダンボールから手当り次第、クッションやら布団やら取り出しながら俺は自然とそんなことを口にする。

「それって、どういうこと?」
「そのままの意味だけど」

 平然とする俺を見て、レイは急に背中を向けて口を閉ざしてしまう。

 そんなに赤くなって、本当にレイは可愛いな……。
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