サルビアの育てかた
 車を運転しながら俺はそんなことを考えていた。
 新スクールに到着するまでまだまだ距離がある。

「レイはいい子だよな」
「えっ……急に何っ?」

 突拍子もない俺の言葉に、声が裏返るレイ。
 戸惑う彼女の反応が面白くて、俺はつい笑ってしまう。

「いや、ふと思っただけだよ。こんなこと言っていいのか分からないけど……レイは今までたくさん辛い想いをしてきただろう。それなのに、毎日明るく前向きに頑張ってる。レイは偉いよなって」
「それは──」

 少し間を開けた時。俺の手を握りしめるレイの指先が何となくあたたかくなったような気がした。

「ヒルスとみんなのおかげ、かな」
「え」
「みんなが優しくしてくれるから私も笑顔で過ごせるんだよ。ヒルスがいつもそばにいてくれるから、前向きになれるの。私は周りの人たちに恵まれてるから、幸せ」

 赤信号に捕まり、俺はブレーキをゆっくり踏む。
 彼女の言葉は、あの信号よりも赤く輝いているものだった。胸が高まる俺は、そのまま本能のままに彼女の唇にゆっくりとキスを捧げた。

 ──その通りだ。レイの周りには、素敵な仲間がたくさんいてくれる。君の幸せを願う人たちが、俺以外にもいるんだ。
 もちろん、天国で見守り続けてくれている父さんと母さんも同じだよ。
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