サルビアの育てかた
だけど俺が彼女から目を逸らさずに答えをじっと待ち続けていると、レイは観念したようにゆっくりと口を開いた。
「……ダンス練習している時」
「え?」
「一人で倒立をしてたの。出来るだけ長い時間キープ出来るようになろうって。ちょっと無理しすぎちゃったかな。途中で腕が曲がって、そのまま上半身から思いっきり倒れちゃって」
「ドジだよね、私」なんて言いながらレイは苦笑する。
「そうだったのか。それは全然知らなかったな……」
「恥ずかしくて言えなかったの」
「でも、怪我をしたら言わないと駄目だぞ」
「これくらい大したことじゃないよ」
「大したことなくてもしっかり報告するのがルールだ。分かったか」
「はい……ごめんなさい」
落ち込んだようにレイは小さく返事をした。
俺はそんなレイの頬に静かに手を当て、優しく微笑みかける。
「でも大きな怪我じゃなくて良かった。レイは頑張り屋さんだからな。無理しすぎないで」
「うん。ありがとう、気をつける」
レイを腕の中に抱き寄せ、俺は仰向けになってぼんやりと天井を眺めた。
(レイが倒立を失敗するなんて珍しいな)
そう思っているうちに、急に眠気が襲ってきた。
眠りにつく前に、もう一度だけ君とおやすみのキスを。
俺たちはその後すぐに寝息を立てて夢の中へ落ちていった。