サルビアの育てかた
 昼間にもかかわらず堂々と抱き締め合い、互いのぬくもりを感じた。寒さなんて俺たちにとってはないようなもの。
 周りの目なんか全く気にしない。熱い抱擁をしたまま、俺はレイの額に優しくキスを送る。

 もっと、彼女を感じたい。唇にキスがしたい。

 欲に任せレイのサングラスをおもむろに外した、その時だ──

「……ん?」

 彼女の目を見て、俺は一瞬固まってしまう。

 どうしたんだ?

 レイの表情が、おかしい。まるで、生気が抜けたような目になっている。
 彼女は一体、どこを見ているのか。意識が完全に遠くへいってしまっているようだ。

「レイ……?」

 突然のことで、俺は戸惑いを隠せなくなる。
 レイが完全に【無】になってしまっているから。顔が恐ろしいほどに暗く、闇に包まれているかのよう。
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