サルビアの育てかた
 極稀に、レイは抜け殻のように意識がどこかへ飛んでしまうことがある。
 たった今まで楽しそうに話をしていたのに、何が起こったというのか。

「なぁ、レイ」
「……」
「レイ!」

 俺が大きめの声で呼びかけると、レイはハッとしたように目線をこちらに合わせた。

「あっ。ごめん……何?」
「何、じゃなくて。ボーッとし過ぎだよ。どうしたんだ」
「う、うん……何でもない。ちょっと疲れてるのかな」

 作り笑いのようなものを浮かべるレイに、俺は掛ける言葉が見つからない。

 彼女の心の奥底から、闇のようなものが伝わってくる気がした。だけど……深く聞いてはいけない。そんな気がして、俺はきつく口を閉ざした。

 わけもなく気まずい空気が漂う。しばらくの間、無言の時間が流れた。

 レイと指を絡ませ、肩を寄せ合う。
 帽子を深く被り、俺はこの何ともいえない雰囲気から逃れたくなってしまった。
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