サルビアの育てかた
 ショックで、胸が痛くなる。痛くて痛くてたまらない。
 彼女を抱くのを止めた。キスも出来そうにない。
 その代わり、汗がありえないほど滲み出てきた。

「ごめん……シャワー浴びてくる」

 レイは、頷くことも無くただ黙って天井を眺めていた。

 シャワールームに駆け込み、俺は汗と共に目から溢れ出るものも全て流そうとした。
 だけど、どうしても止まらない。シャワーをどれだけ浴びても、全然流れ落ちてくれない。
 夢を見ているんじゃないかとさえ思った。レイがあんな風に考えているなんて知らなかった。

 俺は堪らず、小さく唸り声を上げる。

 レイにとって俺は、今でも義理の兄だったのか。いや……間違ってはいない。だけど、だけど。俺たちの関係は、それ以外にも複雑に絡んでいる。
 訳が分からなかった。

 しかし、一つだけはっきりしていることがある。
 プロポーズをする前に、彼女に結婚を断られてしまったんだという悲しい現実。
 その事実が俺の胸の奥を苦しめた。息が止まりそうだ。

 滴るお湯が床に落ちていく度、俺の苦しみの叫び声はかき消されていった。
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