サルビアの育てかた
帰宅後、休む暇もなくレイは夕飯作りに取り掛かった。黄色いエプロンを身に着けて、手を洗ってから冷蔵庫の中を眺めている。
(レイのエプロン姿、可愛いんだよな……)
一生懸命夕飯のメニューを考えているレイの後ろ姿が尊い。
もしも今、彼女と普通の恋人同士だったら。何の躊躇いもなく、俺は彼女の背中を抱き締めるのに。
欲を必死に抑え込み、俺はコートを脱いでキッチンで手を洗う。
「ヒルス、今日は何食べたい?」
「何でもいいよ」
「その答えが一番困るんですよねぇ」
レイはわざとらしく頬を膨らませて俺の方を振り返る。
(そんな顔するな。キスしたくなるんだよ……)
たまらず目を逸らした。
本当にやめてほしい。これでは俺はまた彼女に翻弄されているじゃないか。
小さくため息を吐き、ポツリと呟く。
「あんまり腹減ってないから、別に食べなくてもいいかな……」
最近食欲すらも落ちてしまっている俺の本心だった。昼間はバーガーショップでガッツリ食べてしまったし。
ほんの軽い気持ちの発言だった。
俺がどんな態度を取っても、常に笑顔を絶やさなかったレイの表情が、この時ばかりは見る見るうちに暗くなっていく。
「……どうして」
「え?」
「どうして、そんなこと言うの? 私、ヒルスと一緒に夕飯を食べる時間が好きなのに」
明らかに落ち込んでいる声だ。
俺は面食らってしまう。
「いや、違うんだ。少し食欲がないだけで。レイが作ってくれたものならちゃんと食べるから」
不愉快な心情が見て取れる。
──参ったな。レイを怒らせると、何をするか分からない。また衝動的に家から飛び出してしまうかもしれない。
しかしそんな心配は不要だった。
レイは背を向けて材料をテーブルに並べ始める。「先にシャワー浴びてきなよ」なんて呟きながら。
(レイ……怒ってるわけじゃないのか)
彼女の後ろ姿はどことなく寂しさに包まれている気がした。
(レイのエプロン姿、可愛いんだよな……)
一生懸命夕飯のメニューを考えているレイの後ろ姿が尊い。
もしも今、彼女と普通の恋人同士だったら。何の躊躇いもなく、俺は彼女の背中を抱き締めるのに。
欲を必死に抑え込み、俺はコートを脱いでキッチンで手を洗う。
「ヒルス、今日は何食べたい?」
「何でもいいよ」
「その答えが一番困るんですよねぇ」
レイはわざとらしく頬を膨らませて俺の方を振り返る。
(そんな顔するな。キスしたくなるんだよ……)
たまらず目を逸らした。
本当にやめてほしい。これでは俺はまた彼女に翻弄されているじゃないか。
小さくため息を吐き、ポツリと呟く。
「あんまり腹減ってないから、別に食べなくてもいいかな……」
最近食欲すらも落ちてしまっている俺の本心だった。昼間はバーガーショップでガッツリ食べてしまったし。
ほんの軽い気持ちの発言だった。
俺がどんな態度を取っても、常に笑顔を絶やさなかったレイの表情が、この時ばかりは見る見るうちに暗くなっていく。
「……どうして」
「え?」
「どうして、そんなこと言うの? 私、ヒルスと一緒に夕飯を食べる時間が好きなのに」
明らかに落ち込んでいる声だ。
俺は面食らってしまう。
「いや、違うんだ。少し食欲がないだけで。レイが作ってくれたものならちゃんと食べるから」
不愉快な心情が見て取れる。
──参ったな。レイを怒らせると、何をするか分からない。また衝動的に家から飛び出してしまうかもしれない。
しかしそんな心配は不要だった。
レイは背を向けて材料をテーブルに並べ始める。「先にシャワー浴びてきなよ」なんて呟きながら。
(レイ……怒ってるわけじゃないのか)
彼女の後ろ姿はどことなく寂しさに包まれている気がした。