サルビアの育てかた
 呆れたような顔をしつつ、彼は私の顔をぐっと覗き込んできた。

「そんなことより、レイ。最近ダンススクールに行ってないみたいだな。ジャスティン先生も、クラスのみんなも心配しているぞ」
「……」

 心の中を見透かされそうで、思わず顔を背けた。どう返事をしたらいいの?
 彼は椅子に腰かけ、無理やり目線を私に合わせようとしてきた。

「もしかしてスランプなのか? 誰でも経験することだ。あまり気落ちするなよ。俺にもそういう時期はあったから……」
「違う、そうじゃない!」

 彼の話を遮り、思わず大きな声を出してしまう。

「じゃあどうしてレッスンに行かないんだよ」
「……関係ないでしょ」
「関係あるから言ってるんだろ」
「私がダンスを辞めても、あなたには……ヒルスには何にも関係ないよ!」

 私は息を荒くしながら、ヒルスから身体ごと逸らしてそう言い放つ。

「辞める……? 辞めるのか? なに言ってるんだ、冗談だろ」

 まるで、私の言葉なんて信じられないという声になっている。
 いつまでも居座るヒルスにイライラしてしまう。今は構ってほしくない。たまらず私は手元にあったクッションをヒルスに向かって投げつけた。

「もう出ていって!」

 自分でもなにをやっているんだろうって思うよ。 
 こんなにヒルスが心配してくれてるのに、追い出すような真似をして。生意気だし最低だし、本当に可愛くない奴だよね。
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