サルビアの育てかた
 ──夕食が冷めてしまった頃だろうか。レイの震えは次第に落ち着いてきて、おもむろに顔を見上げてきた。
 悲しみと辛さ、恐怖心といった瞳の色を滲ませながら彼女が唐突に放った言葉はこうだ。

「私は、悪魔の子だよ」

 酷く真剣な表情。
 俺は唖然とする。

「何、言ってるんだよ」
「分かるでしょ。私にはこんなものがあるの。悪魔からもらった身体と火傷の痕。血の流れも、あの悪魔からもらったものだよ」

 怖いくらい、レイの口調は冷酷だった。まるで自分自身に嫌悪感や憎悪を抱いているように。

「この火傷の痕を消したいよ。過去を全部なくしたい。私はあんな奴の血が混ざっているから。汚い女だから……本当はヒルスと幸せになっちゃ駄目なの」
「どうしてそんなことを言うんだ」
「だって……」
「血の繋がりなんて関係ないだろ。レイが一番よく分かっているはずだ。俺はレイ自身が好きなんだよ。だから、自分で自分を傷つけるのは絶対にやめろ!」

 思わず口調が荒れてしまう。

 大好きなレイを傷つける奴は誰であろうと許さない。例えそれが、彼女自身であったとしても。

 ダンスの練習をしていた時に怪我をしたなんて嘘をついていたんだ。誤魔化してまで自分の体を痛めつけるなんて。
 なぜ。どうして。
 俺にはその気持ちを理解するのがどうしても出来ない。
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